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2013年2月

神楽坂で、本のイベント「レラドビブリオテック」がスタート

 
花街の印象が強い明治以降の神楽坂だけれど、
実は、文芸の街でもあるんですね。
 
尾崎紅葉、泉鏡花が住んでいたし、 今もいろんな出版社があったりする。
 
ちなみに、うちの店も新潮社の裏手にあるわけだし。
 
本屋の街と言えば神保町が有名だけれど、神楽坂は本の街だったんですよね。
夏目漱石や永井荷風の足跡が残ってたりするのも、これまたオツな感じ。
 
 
そんな経緯もあって。
 
昨年2012年の2月、地元の名士・うす沢さんが中心になって、
本の街・神楽坂を見直そうという街ぐるみのイベントが開かれました。
 
その名も、レラドビブリオテック。
 
これ、フランス語でして、直訳すれば「図書館のねずみ」。 意訳すれば「本の虫」。
つまり、「本、大好き!」っていう名のイベントだったわけです。
 
神楽坂界隈あちこちのお店や会社で、
大々的に、「本」と「読書」をテーマにした特集が組まれたんですよ。
 
 
そして、今年。
 
満を持して、その第二回目が今日から開催されております。
 
「神楽坂 暮らす。」は、「読書のお供にコーヒーとマグをどうぞ」ということで、
五人の作り手によるマグカップ展「コーヒーと私」で、このイベントに参加。
 
すでに神楽坂の街のあちこちでは、イベントマップの配布が始まっていますよ。
 
 
この機会に、古き良き文芸の香りが残る神楽坂の街を、
マップ片手にそぞろ歩いてみてはいかがでしょうか。
 
神楽坂マニアの方も、神楽坂に来たことがない方も、
冬の終わりの街歩きを堪能していただければ、と思っています。
 
 
レラドビブリオテック 2月16日(土)~24(日)
 
 
■店主の個人ブログはこちら>> 神楽坂 器 日和。
■店主のつぶやきはこちら>> 神楽坂 暮らす。
 
 
 
(2013年2月16日)



MCグラスラボ -ガラス工房見学記

 
レースガラスの制作を得意としているMCグラスラボ(板橋区)は、
ガラス作家の永井煌晟さんが主催する工房。
 
レースガラスというのは、ヴェネツィアで生まれたガラスの装飾技法で、
ストライプやらせん状の繊細な模様を施したものです。
 
店主は先日、その制作工程を見学してきましたよ。
 
 
普通の吹きガラスとは、工程・作り方が少し異なります。
 
あらかじめ、模様を構成するパーツ(色ガラス棒)をたくさん作り溜めておき、
そのパーツを組み合わていくことによってひとつの作品を完成させてゆくのです。
 
 
具体的には、以下のような工程で制作されていきます。
 
らせんのガラス棒を作る工程は、飴細工の作り方に似ているかな。
 
 
mc_howto4.jpg
 
1、色ガラスを芯にしたガラス棒を、長ーく延ばす。
2、1でできた長いガラス棒を使いやすい長さ(10㎝位)にカットする。
 
 
mc_howto7.jpg 
 
3、2でできたガラス棒を、熱を加えながら何本か束ねる。
 
 
mc_howto9.jpg
 
4、3をさらにねじることで、らせん模様のガラス棒を作り、長く延ばす。
5、4でできたガラス棒を使いやすい長さ(10㎝位)にカットする。
 
 
mc_howto10.jpg
 
6、5でできたガラス棒をすのこのように並べる。
 
 
mc_howto12.jpg
 
7、芯になる透明な吹きガラスを作り、6を巻き取りながら形を整える。
 
 
mc_howto13.jpg
 
8、炉に入れて熱しながら、表面のガラス棒の凸凹をならしてゆく。
 
 
mc_howto1.jpg
 
9、8を何度か繰り返しながら、縁や底の部分の形を整え、作品を完成させる。
 
 
以上の通り、工程がたくさんあって、ものすごく大変な作業なのですが。
 
「鉄は熱いうちに打て」ならぬ、「ガラスは熱いうちに加工しろ」とでもいう感じで、
リズミカルでスピード感あふれる制作風景は、まるで魔法のよう。
 
エンターテインメント性があるので、見ていて、とても清々しかったですよ。
 
 
そうして出来上がった作品は、
繊細でありながらも、 手仕事のあたたかさのようなものが感じられます。

飲み物を注いだときのきらきらと輝くうつくしい表情を楽しみながら、
日々の食卓で使っていただきたい逸品です。
 
 
MCグラスラボの商品ページ
 
 
「神楽坂 暮らす。」では、2013年の早春、
以下の日程で永井煌晟さんとMCグラスラボの作品展を開催予定。
 
色とりどりのレースガラスのタンブラーなどが揃いますので、
どうぞおたのしみに。
 
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永井煌晟 -MC Glass Lab.- eXhibition
2013年2月22日(金)~3月7日(木)
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(2013年2月10日)
 

江戸彫金 職人の世界に触れる

 
「神楽坂 暮らす。」で取り扱うジュエリーを作ってくれている坂有利子さんは、
谷中彫金工房で、江戸彫金(東京彫金)の勉強をした方。
 
坂さんの作品の繊細で柔和な彫りの技術には、目を見張るものがあり、
店主は、そのベースになっている江戸彫金の世界に、かねてから興味がありました。
 
そんな経緯もあって、
先月、坂さんの師匠である斎藤照英先生の工房を訪ねることに。
 
 
ここ最近、香炉や花器など、明治時代の超絶技巧による彫金作品が、
いろいろなメディアに取り上げられて、再評価されていますが。
 
店主がとても興味があったのは、
技巧のプロセスもさることながら、一流の職人のスピリットとでも言うべきもの。
 
現在、「作家(アーティスト)」を名乗る人は増えているけれど、
「職人(マイスター)」と呼ばれる方々に出会える機会など、稀なこと。
 
先生にはお忙しい中、時間を割いていただいて大変申し訳なかったのですが、
雑談をさせていただくことで、「職人の想い」の一端に触れることができました。
 
 
お話の中をうかがっていて、
一流の職人になるためには、以下の三つの条件が必要なのだということを再確認。
 
1、才能=手先の器用さ 2、忍耐力=継続する意志 3、感性=粋を感じる心。
 
才能と忍耐力は、どの世界で大成するにも必要なことですが、
彫金という工芸にとっては、感性も絶対に欠かせないことなのですよね。
 
それをもっと具体的に言うならば、
「書画文芸に通じることで、『粋』を表現できる力を養う」ということ。
 
 
工房には、先生が書いた草書の美しい掛け軸が飾ってあったけれど、
斎藤先生、書の分野でも一流なのです。
 
たぶん、そういった素養がないと、
作り出すものが、 「作品」ではなく、「製品」になってしまうのでしょうね。
 
「粋」が吹き込まれてはじめて、心ゆさぶる彫金作品が生まれるのだいうことを、
先生とのお話の中でしっかりと実感しました。
 
 
現在、斎藤先生は作品制作だけではなく、
明治大正の一流の先人たちが作った作品の修復・修繕も手掛けています。
 
一流の作品の修復には、一流の職人の力が必要なのですが、
後継者不足が続けば、それも困難になってくるわけで。
 
時代とは言え、お話を聞いていて、なんだか寂しい気分になりました。
 
 
ちなみに斎藤先生の工房は、
幕末明治期に活躍した名工、加納夏雄さんが眠る谷中墓地のすぐそば。
 
坂さんとともに、店主もしっかりとお参りをしてきました。
 
先生曰く、「加納先生のお墓参りすると御利益があるよー」とのことでしたよ。
 
 
[追記]
 
実は、先生が修復を終えた素晴らしい作品の数々を拝見したのですが、
諸々の事情からお見せできないのが、とても残念。
仕事場や道具の画像から彫金の世界を想像していただけたら、と思います。
 
 
 
(2013年2月2日)